弓の口あけ(ムービー)

不土野、古枝尾の公民館を訪ねる。 天気の良い日とは言え、まだまだ肌寒い2月。公民館の軒先に敷かれた畳の上で男たちが、代わる代わる弓を引いている。 「もう一矢出し申す。」 「・・・頼み申す。」 「だんだんありがとうございもした。」  聞きなれない口上と笑い声の間を縫って、時々「シュッ」鋭い音を立てて風を切った矢が、向かいの田の中に置かれた的に「トン」と突き立つと、 後ろに陣取った女性陣が褒める、外せばけなす。なんとものどかな時間が流れます。

『弓の口あけ』は四月に行われる春まつりでの『的射』の神事に向けて、その年の始まりに行われる準備と練習のようなもの。どうりで焼酎も入り、和やかに楽しんでいるのですね。  そもそも『的射』は鬼の眼に見立てた的を射抜くことで家族を脅かす厄災を払うもの。秋から冬にかけて行う神楽と並ぶ大切な春の神事なのです。  昔は雨や雪で仕事ができない日などに男たちが集まって腕を競い合っていたそう。  本番の『的射』もぜひ見てみたいけど、のどかな『弓の口あけ』に偶然めぐり当たったのも、とても幸運なことでした。