『あやかちゃん椎葉の食を学ぶ』その3回目
今回ご紹介する食材は、豆腐、そば、漬物や味噌など数ある椎葉の伝統食の中でも、一番不思議な食べ物。 不思議といったら語弊があるかもしれませんね。一番作り方が難しいと言うか、分量や配合がハッキリ決まっていなくて、上手に作るのに勘と経験が物を言う・・・そう、地こんにゃくです。 混ぜ加減と火加減と手加減だけであんなに美味しいプルプルのこんにゃくが出来る不思議を。そして一番大事な「加減」をあやかチャンの畑の大家さんであり、師匠であり、椎葉のお母さんでもあるトキワさんに教えてもらいました。 今回は、最近椎葉に移住してきたばかりの堀上駿くんも一緒に体験です。なにせ芋を掘るところから始めるのですから、頼もしい助っ人です。
仕事にかかる前にこたつでお茶をいただく。こたつ下は囲炉裏です。
まずは一番大事な灰汁(あく)つくり。囲炉裏の灰を 使う。樫の木の炭だけを使うから、とても良い灰。灰に熱湯を注ぎ混ぜる。灰が沈んだらそーっと濾して 上澄みだけを使う、これが灰汁。
こんにゃく芋は畑の周りや果樹の下などに育っている。 立ち枯れた茎を目印に掘るのだけど・・・
これがなかなか大変でした。
やっと掘り集めた芋たち。掘る時にどうしても鍬(くわ) でざっくり切ってしまうのがかわいそう。
湯がいて皮を剥く。大きい芋だけでは粘りが出ないので、 小さい芋も混ぜた方が良いらしい。
お湯を足しながらミキサーでトロトロにする。「こんにゃ くは水ばかし」と言うくらいたっぷりお湯を足します。
灰汁の質によってこんにゃくの固まり方は大きく変わる。 今回はどうかな?
お湯を加えてしっかり捏ね、水分調整をした後、灰汁 を少しずつ混ぜながら練っていく。粘りが強くなって くることを確認しながら、慎重にしかも手早く、ちょ うど良い固さを見極めるのが難しい。
シワや切れ目が出来ないようにつるんとした玉にする。 これもなかなか難しく、言葉にできない手加減が必要。
およそ1時間くらい茹でると食べられるようになる。 いびつな出来栄えの玉もあるけど、味は上出来。
囲炉裏の灰と梅の木の下で掘ったこんにゃく芋。あとは水場に絶え間なく流れてくる山の水、薪がひと抱え。昭和時代のミキサーとそれを回した少しの電気以外は家の周りに有るものです。 土から掘り出した芋はゴツゴツして、生では絶対に食べられない成分のものなのに、それに手を加えて、見た目も食感も全く違う美味しい食べ物を生み出してしまった人間の知恵に感服するばかりです。 そしてトキワさんもその一人、「分量は決まってないの。芋も灰汁もその時その時で違うでしょ。」確かにそうですね。お店で買う材料ではないからね。体で覚えるしかないと言うこと。何度も挑戦して、失敗もしていけば、いつかトキワさんのような笑顔になれることでしょう。
追伸、今回は師匠の指導のおかげで、奇跡的に美味しいこんにゃくができました。