気持ちよく晴れた夏の日、向山日添。焼畑蕎麦倶楽部のログハウスを訪ねます。
『あやかちゃん椎葉の食を学ぶ』その二、今回の伝統食は『しその千枚漬け』です。
夏の盛りに青々とその葉を茂らせるしそ。庭先に山のように積まれたそれを、黙々と茎からちぎっていく二人。今回の椎葉の伝統食は『しその千枚漬け』。これは本当に千枚…いや、もっとたくさんあるかもしれんね。なんて、『千枚』は葉っぱの数の問題ではなく、「出来上がりが、千枚も(たくさん)重ねたように見えるから。」
教えてくれるのは、民宿焼畑の女将、椎葉ミチヨさん。最近では作る人が少なくなったのはこの大量のしそを準備する大変さと、さらに作り上げるのに、ひじょーに手間と時間がかかるからなんでしょうね。 ちなみに、椎葉では在来の青紫蘇のことを白紫蘇と呼んでいます。千枚漬けはこの白紫蘇と赤紫蘇を混ぜて作ると香りが良く美味しく出来上がるそうです。
きれいな葉だけ選んでちぎり、 4、5回しっかり洗って、よごれや虫を落とします。
ちょっとしょっぱいくらいの加減で塩を混ぜ、豆腐の 木箱に端までしっかり、ぎゅうぎゅう詰める。
重しをして、そのまま3日ほど置きます。
ここで今日の作業は終わり、ロウハウスの裏山の焼畑には蕎麦が一斉に芽を出していました。
おやつには、小さなあくまき。
さて、重石をして3日ほど置くと、しそが固く締まって塊になります。
豆腐のように切り分けます。 断面は、まるで地層のよう。
皮の水気をしっかりふいて、お土産のようにきれいに 包みます。漬けた時に味噌がしそに直接つかないように、 且つかさばらないように包むのがなかなか難しいのです。紐も竹皮を割いて作っています。
味噌桶の一番下に味噌を敷き、しそ、味噌と交互 に重ねていく。
半年後から食べられるようになります。
食べるときには、漬物のように 小さく切っていただきます。
しそをまるで豆腐のような四角い塊にして、それを更に竹の皮でくるんで味噌漬けにするという手間のかけよう。しかも半年以上も待てる心の余裕。千枚のしそが、ぎゅーっと圧縮された断面は、まるでこの村に受け継がれてきた、食べることの伝統そのもののように見えてくるのでした。
同じように味噌に漬けて発酵させる「ねむらせ豆腐」や、いろんな野菜の味噌漬けも、椎葉の保存食の文化の豊かさを象徴しています。 特別高価な素材は要らない。丁寧な手仕事と、ゆっくり待てる心の余裕があれば、人を幸せにする贅沢なごちそうができるんですね。