ヤギのユヅルくんは、愛嬌たっぷり人懐っこく、大食いのお兄さん。栂尾の日当たりのいい家の馬屋の前で、ひねもすニコニコしています。
そんなユヅルくんに最近可愛い妹ができました。
メチャメチャ美人(父さん評)の色葉ちゃん。
二人の暮らす家庭とは?
数枚の畑を前に、雑木林を背中に、母屋と馬屋が並ぶ、いかにも椎葉らしい民家の中心に不思議な模様にペイントされた煙突が立っています。
ここが内村家の住み家。 地域おこし協力隊員の光希さんと、奥さんの正子さん、二年前から始まった二人(と一頭)の暮らしは、地元の人たちの温かさと知恵に支えられて、ほのぼの楽しい田舎暮らし。
そして去年の冬に色葉ちゃんが仲間入りしたというわけです。
都城市出身の光希さんと大阪府出身の正子さんが出会ったのは岩手県花巻市の『自然農園ウレシパモシリ』。
光希さんは大学で環境工学を勉強した後、日本各地での農業の研修を体験しました。正子さんは山小屋でのアルバイトや京都での販売員の仕事を・・・と、二人とも日本のあちこちでいろんな経験を積んだ後に、岩手の農園で研修生として出会います。
その後二人は、自分たちらしい暮らし方ができる場所を探す中で、椎葉村と出会い、下見に来て一発で気に入ってしまったというわけなのです。
空き家だったこの家を快く貸してくれた大家さんは、今は日向市内に暮らしていて、家だけではなく、畑や農機具も自由に使っていいよと言ってくれているそうです。時々ここを訪れて、家の周りのあれこれを手伝ってくれたり、いろんな相談にも乗ってくれたりするのです。
お隣に住む俊二さんも、優しくて頼りになる人。今日はお手製の鹿肉のローストを持ってきてくれました。 「美味しいかどうか・・・味見して」 他にも、畑や暮らしの世話を焼いてくれるおばちゃん達もいるし。昔の暮らしの知恵を教えてくれる先輩たちもたくさん。 俊二さんは言いました。 「隣に若い人たちが住んでくれて、楽しいばっかりよ。こっちも元気が出るわ!あっはっはー。」
こんないい関係が築けているのは、二人が栂尾の暮らしを丸ごと受け入れて、人生の先輩方を尊敬しているから。
「もう、なんでも自分たちの手で編み出してしまう技と知恵がすごいんです。」と正子さん。
「いろんなモノを与えてもらってばっかりだけど、私たちは、若い者にしか出来ないことをお返しすればいいと思ってるんですよね。」
なるほど、それは今の所、遠慮なくお世話になることかもしれない。元気な「ありがとう」の言葉かもしれない。そして何より色葉ちゃんの笑顔を見せてあげることかもしれない。そう思えるのでした。
光希さんは二十年以上放置されて野原に戻りかけていた休耕田を耕し始めた。長い間にカヤが茂り、アケビのツルがこれでもか!と地面を覆い、しっかり木まで生えかけていた田んぼ。とても一人では太刀打ちできなかった自然の力。それでも栂尾のおじさん達の手助けを受けて、どうにかトラクターで土を起こせるところまで漕ぎ着けることができました。
これから田んぼ復活の挑戦は本格化する。光希さんは言いました。
「村の伝統を守るとか、そういう責任感でやっているのではないんです。単に楽しいから。」
そうだよね、そうじゃないと嘘っぽいよね。何か腑に落ちた感覚。
田んぼのそばに停めた軽トラの助手席でスヤスヤ眠る色葉ちゃん。家ではユヅル兄さんが待ってます。
「お腹すいたよ〜草くれ〜」
メ〜〜