椎葉中学校 寄宿舎「醇和寮」に潜入

『風薫る 椎葉里歩き』 第4回
椎葉中学校 寄宿舎「醇和寮(じゅんわりょう)」に潜入

 椎葉で一つだけの中学校、椎葉中学校。
 小学校全5校区の生徒たちが、村の中心部にある椎葉中学校に通っています。 そしてこの椎葉中のすごいところ、寮があるのです。


 東京都23区を一回り小さくしたような、広大な面積の椎葉村。その全域から一つの学校へ毎日通うのはそう容易(たやす)いことではありません。そんなわけで、 椎葉中学校の歴史は、ずっと寄宿舎と共にあり続けてきました。

 現在は、生徒全体のおよそ8割にあたる40名程が学校の敷地内にある寄宿舎「醇和寮(じゅんわりょう)」で生活をしています。
 月曜から木曜の夜までを寮で過ごし、金曜の夕方に迎えの車やスクールバスで各自家に帰る。そして月曜の朝登校し、また1週間が始まる。そんなルーティンで、夏と冬の長期休みを除いたほとんどの期間、共に寮生活を送っています。

放課後は部活動。野球部、剣道部、卓球部、陸上部、バレー部の5つ。

運動場の脇を通って、部活のない3年生は一足先に寮へ帰ります。

帰ったら、まずは夕食。男子はごはん大盛り!

お風呂の後は自分たちで掃除。やっぱり女子は丁寧。

洗濯も順番に。もちろん自分で。

意外と長い学習時間。中学生も大変です。

一息入れて、将棋で頭の体操。

部屋は1年生から3年生まで、縦割りのメンバー構成でも和気あいあい。「枕投げして」のリクエストに応えてくれました。

さて、そろそろ布団敷きましょう。

舎監の辰男先生と寮母の真紀先生は、夜中も皆を見守ります。

 椎葉村には高校はありません。進学はすべて近隣都市の高校。つまり今、寮生活を送る子どもたちは、小学校卒業と同時に親元を離れ、中学校生活が終われば椎葉からも離れてしまうと言うことです。
 そのことを踏まえた寮での3年間は、親にとっても子にとっても、これから先の将来を見据え、覚悟を固めていく準備期間のように感じました。
 ちょっとセンチメンタルに感じて、家族と過ごす時間が少なくて寂しくない?と尋ねると「親の方が寂しいはず」と、余裕の中学生たち。規則や時間割り通りに生活するのは少々窮屈なようでもありますが、その分勉強時間にはきちんと机に向かう習慣が付いたり、掃除や洗濯も全て自分でやることで親のありがたみがわかったり。「寮に入って後悔はない!」と断言する子もいました。立派だなあ。
 そして何より、いつも友達と一緒にいられるということが、この青春時代真っ只中の彼らにとって最高に楽しいことのようでした。そういえば私も中学の頃は、箸が転んでもみんなで笑っていたような。

 『子ども』でいられる最後の3年間。椎葉から飛び立つ心構え中。でも親にとっては、子どもはいつまでも、子どもですよね。
 そして椎葉はいつまでも、みんなの帰る場所であり続けます。