大河内小学校 小さい大運動会

快晴の空の下、高い山に囲まれた川沿いのグラウンドには、にぎやかな音楽と声援がこだまします。

ここは大河内小学校。

全校生徒12人の小さな学校の大運動会。

徒走で競うのは、友達との勝ち負けではありません。それぞれが紙に書いた目標タイムを高く掲げ、大きな声で発表してから一人きりで走ります。まさに自分自身との戦い。一人一人が自己新記録を目指すのです。

1周100メートルほどのトラックの内側には杉の青葉が突き立てられていて、急カーブを曲がる上での目印になっています。このなんとも椎葉らしさを感じさせる景色は、お父さんやおじいちゃんの時代から変わらぬ椎葉の伝統なのだそうです。

運動会には保育所の子どもたちはもちろん、地域の大人たちも参加します。ちびっ子たちは可愛いダンスを披露し、 大人たちは『鹿組』対『猪組』、『ヤマメ組』対『鮎組』に分かれての本気の綱引きに大張り切り。

おじいちゃん、おばあちゃんはボールで一升瓶を倒したり、景品を釣り上げる競技で会場を和ませました。

他にも親子対抗の競技や、年長の子が小さい子どもをリードして行う競技などが繰り広げられます。

 

この盛りだくさんのプログラムには理由があります。というのも小学生の競技だけではすぐに終わってしまう上 に、子どもたちは出ずっぱりでくたび れてしまうからです。地域のみんなや先生方もたくさんの出番を持って、和気あいあいと楽しむのが椎葉の運動会なのです。

午前の部、最大の見せ場は大河内臼太鼓踊り。保存会の大人たちと練習を積んできた子どもたちが真剣な表情で踊ります。

この時ばかりは放送の音も歓声も止み、静かな山々に太鼓の低い音と、「チーン、チーン」という鐘の音だけが、気高く響き渡ります。その光 景に、見る者全員が感動を覚えるのでした。

 

さてお待ちかねのお昼休み、色鮮やかなお弁当の花があちらこちらに開きます。

子どもたちは、おばあちゃんたちに「よう頑張ったね」と褒められながら、大きな口でおにぎりを頬張ります。

 

そんな小さな大運動会、勝敗の結果は見事に同点。一つ一つの競技の加点方式のため先生達の忖度は無しとのこと。

どこまでも和やかな運動会は両団揃って優勝旗を受け取りその幕を下ろしました。

 

これで子どもたちも全員大満足、今夜は朝までぐっすり眠ることでしょう。