「ひきわり」と言えば大豆をこまかく刻んだ納豆を想像する人が多いと思いますが、今回は違います。椎葉の有名な「菜豆腐」の原型、平家カブをつかった豆腐のことです。ざっくり切った平家カブの葉の部分が裂け目になって、手でほろっと引き割れることから、平家『ひきわり豆腐』と呼ぶようになったんだそう。
田植えや蕎麦刈りなど、共同作業「かてーり」の時は、お母さんたちが食べ物を持ち寄ります。そこで、誰が何を持って来てくれたかというのを書き留めていたのが大福帳。 今回の師匠の清田泉さんが見せてくれた大正時代の大福帳にも、「豆腐二丁」の文字がありました。ずっと昔から作られていた椎葉の御馳走に、あやかチャンが挑戦します。
水で戻した大豆を多めの水とミキサーにかける。大豆 の粒が残らないよう、しっかり挽きます。
実は椎葉の野山にも生えている平家カブ。 今日は雪の中から掘り出して収穫。手が冷たーい!
大豆をミキサーにかけてできた「呉(ご)」を釜に。 さらしの袋に入れたカブの葉も一緒に火にかけ香りを うつす。
煮立ったら、さらしで濾しておからと豆乳に分けます。 棒を使って押したり捻ったり、大変な力仕事です。
豆乳を絞ったあとに残ったホカホカのおから。これも 美味しくいただきます。
豆乳が熱いうちに、一回目のにがりを回し入れます。 かき混ぜるのは、一回だけ。やさしくやさしく、丁寧に。
にがりを数回入れると、少しずつ固まってくる。豆腐箱 で押し固める前のこの状態を、ゆるぎと呼ぶそう。
さらしを敷いた豆腐箱に入れて重石(おもし)をして 押し固めます。この日は15分くらい置いておきました。
できた豆腐を箱の筋に沿って切り分けます。まっすぐ 切るのがなかなか難しいのです。
クリーミーな豆腐と平家カブの絶妙なバランス。 歯応えもあって美味しかったー。
豆腐作りはとっても繊細。のんびりしていると豆乳が冷めてしまいます。でも、焦ってもダメ。ぐるぐるかき混ぜてはいけません。やさしく、丁寧に。じっと待てば、だんだん豆乳が「合って」くるのです。(豆乳がにがりで固まることを、「合う」と言うそうです。) 大豆と菜っ葉と水とにがり。シンプルな材料と、たっぷりの手間と愛情をかけて、椎葉の『ひきわり』は完成します。カブの葉の他にも、昔は白菜や菜の花、藤の花を入れていたこともあるそう。今では人参やほうれん草などいろんな野菜を細かく刻んで入れるようになったので、菜豆腐と呼ばれるようになりました。でもやっぱり、手で「ひきわれ」る平家カブの豆腐も、食べ応えがあって美味しいですよ。
右から、今回の師匠、清田泉さん、椎葉キク子さん 左、特別参加、お友達の松本直也さん