神楽の日

小崎神社

十一月、 夜の冷え込みが厳しくなってくると、 椎葉は神楽の季節。 焚き火の番はもっぱら子ども達 まかないが一段落した母さん達も ソバで腹ごしらえ 舞殿の中では、祝子(ほうりこ)たちが汗をにじませ舞い続ける。 鈴の音、太鼓、息づかい 神様に一番近づける日、 椎葉人であることを一番強く感じる日、 一番大変で、一番楽しみな日。 一年に一度の長い長い夜が ゆっくりゆっくり更けていく。 外はしんしん冷えていく。 神楽とともに、椎葉の冬支度。

小崎・川の口神楽は、なんだか楽しげ。明るくて色彩の多い舞殿に見物人が自由に座を占め、神前に向かって祝子たちが囲んで座る中、和気あいあいと神楽が進んでいきます。  『柴引き』では、飛び入り参加した女性たちが絶対に柴を取られまいと猛烈な抵抗をして大盛り上がり。『戸取り』『女粧面』の舞では、いかにも無骨な手力男の神が、女の神の気を引くために肩を優しく叩いたり、振り向いてもらえず身悶えするユーモラスな様子に、思わず神さんを応援したくなるのです。

こんな大男の神を悶えさせるほど色気のある女神さんが、舞を終えて面を取り、見慣れたおじさんに戻ったりして・・・残念なような嬉しいような、とにかく心が温かく、自然に笑いがこみ上げてくるのでした。  ああ、やっぱり、神楽はすごい。人が神さんになり切れるのだから。

夜中をすぎて、眠気と、焼酎の酔いと、太鼓のリズムに何時間も身を委ねた後の陶酔感が相まって、神楽はさらに盛り上がっていきます。  わざと太鼓を間違えて若い舞手を困らせたり、次の所作を忘れた者を観衆が『せり唄』で冷やかしたり。ベテランも若者も、親父も息子も、じいちゃんもばあちゃんも力一杯応援して、賑やかで和やかな神楽は、明け方近くまで続きました。