『あやかちゃん、椎葉の食を学ぶ』
椎葉の地域おこし協力隊、江崎 紋佳(えさき あやか)さんが椎葉の伝統食を学びます。そのレポート第一回。
端午の節句に食べるものといえばちまき。笹の葉に細長く包まれた、白くて甘いお団子のようなちまきを思い浮かべる人も多いでしょう。 でもね、今回学んだ椎葉のちまきは少し様子が違っています。中身も葉っぱも独特で、ちょっと大人の味がするちまきなのです。
これが、たかきび(高黍) 椎葉でも広く作られてきた雑穀です。
粉に挽いたたかきびを捏ねます。 目安はよく言われる「耳たぶくらい」の柔らかさ。
朴(ほう)の葉で優しく包みます。 その形と殺菌作用を上手く使う知恵なんです。
シュロの葉を細かく裂いて乾燥させたヒモ。 水で戻して柔らかくして、ちまきを縛ります。
だんごがちょこっと顔を出していても大丈夫。 なんだか、可愛いでしょう。
朴の葉は扇状に広がって葉がついています。 これをバラバラにしないのが知恵ですね。 蒸すのも、保存にもこのままが都合がいいんです。
せいろで30分ほど蒸します。
フタを開けると 朴の葉の香りがふわっと立ち上りました。
ちまき作りを教えてくれたのは、トヨ子さんと喜代子さん、どちらも八十歳オーバー、栂尾の大ベテランお母ちゃんです。二人もこの朴の葉ちまきをもう何年も作っていなかったそう。
そのまま軒下に吊るしておいて、硬くなったら蒸し直したり、 包みごと焦げ目がつくくらいに焼くと美味しく食べられます。
今回は、たかきびを粗く製粉したので、お団子の粉をつなぎに使いました。以前は踏み唐臼でついて、ふるいをかけたものだけを使っていたそうです。目の細かい粉にするのは大変だったでしょうね。 さらに昔は割とうきびともち粉で作ったちまきと二種類作っていて、包みを開けてどっちが出るかお楽しみだったそうです。 蒸し立てのちまきは、まず朴の清涼感のある香りが立っていて、あむっと頬張ると、たかきびのつぶつぶ感が残っていて、ほんのり苦味とエグ味があって、それが噛むほどに甘味と旨味に変わっていく。そんな奥深い味わいでした。子どもが喜ぶお菓子というより、大人好みのちまき、ですね。 ちなみに、実を取った後のたかきびの穂は箒にして使っていたそう。魔除けの効果もあったそうな。(終)
江崎 紋佳(えさき あやか) 椎葉村 地域おこし協力隊(食の継承者)