ここは尾前の浄行寺、その茶山。
一見、雑木林かと見間違いそうな草木の中で茶摘みをする尾前賢了さんと母の迦代さん。
よく目にするような丸く剪定されたお茶の木ではなく、自然のままに伸びた枝を引き寄せ、美しく芽吹いた茶葉を根気よく摘み取っていきます。
「自然のままの山茶が一番おいしいとよ」と賢了さん。ひとしきり摘んでも腰につけたカゴはなかなかいっぱいになりません。
そうして摘んだ貴重なお茶の葉は一晩寝かせて、翌日は早朝から茶炒りの作業。薄暗い小屋の中、薪の火で熱せられた大釜に茶葉を入れると、バチバチと爆ぜる音がします。炒っては揉み、ねじり、また炒って、茶葉はだんだん細くねじれた棒状に、硬く軽くなっていくのです。
釜の熱気で汗がにじむけど、爽やかで香ばしい茶の香りに、なんだか体の中がきれいに浄化されていくようです。
五月の終わり頃、椎葉のそこここで釜の煙と、いい香りが漂っています。