てづくりの結婚式

小崎地区、竹の枝尾集落。

この日、嶽之枝尾神社で初めての結婚式が挙げられました。

 

新婦は、地域おこし協力隊として数年前に椎葉に移り住んだ川野さつきさん。新郎は、さつきさんの主宰していた農村体験イベントへの参加がきっかけで移住してきた佐々木努さん。椎葉出身ではないけれど、縁あってこの地で出会い結婚を決めた二人のための、てづくりの結婚式。横断幕も、会場設営も、立派なウエディングケーキだって集落の人たちのお手製。それは小崎の皆さんの温かさがつくり上げた、世界で一つだけの、宝物のような結婚式でした。

 

神主さんも巫女さんも地元の顔見知り、ですが式は極めて厳かに執り行われ、二人は神様に結婚の報告を済ませました。

神聖な式が済むと、次はそのまま披露宴へ。参列者が一斉に動き出し、あっという間に会場の準備が整います。

 

余興も盛りだくさん。神楽あり、民謡あり、カラオケに、竿さしも・・・。

竿さし(竿入れ)とは、古くからの椎葉の結納や結婚式での習わしで、元々は結婚式に参列できない地元の若者たちがひょっとこのお面を付けて乱入し、空の重箱を竹の先に吊るして、ごちそうのお裾分けをねだるという、何とも陽気なサプライズ。

様々なお面を被った珍客の乱入に、大人たちは大笑い。片や、それまで楽しそうにはしゃいでいた子どもたちは親にしがみついて大泣きです。

 

五十年ほど前の神社建て替えの際、結婚式もできる広さにと考えられたこの場所ですが、当時の道路事情の悪さから、煮炊きの準備などが難儀なためになかなか実現しなかったのだそう。

そのまま時代は移り、長い間叶うことのなかった嶽之枝尾神社での結婚式がこの日こうして実現したことは、椎葉に魅せられた移住者たちと、彼らを懐深く受け入れた地元の人の双方を、特別な気持ちにさせました。

 

式の最後に挨拶をした嶽之枝尾神楽保存会長の中瀬博光さんは、「日本一の結婚式だった。」と言いました。主役の二人にとってだけでなく、その場にいた村の皆にとっても、忘れられない一日となったのでした。