かてーりの開墾

田舎に移住したからには米をつくるべし!
ということで、谷あいの休耕田を復活させるべく作業を進めています。

20年以上も使われずにいた田んぼの中には大きなカヤの株がぎっしり、
そして法面(土手の斜面のこと)には雑木がモッサリ。
にもかかわらず田んぼの中に木が生えていないのは、きっとそれだけ大事にされてきた田んぼで、土が育っているからなのだろうと思います。

ひとまず、田んぼを覆っているカヤや雑木を切り開いて片付けるところからスタート。
ぼくと妻の移住者ふたり、空いた時間に少しずつ作業を進めますが、なかなか埒が明きません。

するとそれを見かねた集落のおっちゃんたちが、俺らも手伝うぞ、と”かてーり”に駆けつけてくれました。


”かてーり”とは、椎葉村で昔から行われてきた、労働力をシェアする仕組みのことです。
全国的には”結(ゆい)”という言い方をします。
同じ村内でも地区によって「かちゃーり」だったり「かとぅーり」だったりしますが、とにかくこのかてーりの精神によって、昔の人たちは暮らしを成り立たせてきたわけです。

さてさて、山奥の田んぼには続々と軽トラが到着します。
チェーンソーと刈り払い機を担いで歩いてくる5人のおっちゃんたち。たくましすぎる。

田の神様、山の神様にお神酒をあげたあと、作業開始です。
78歳のおっちゃんも刈り払い機を使ってガンガン作業してるから、椎葉にいると年齢とか老いとかいう概念がなんだかよく分からなくなってきます。

あっという間に作業は終わり、茅も法面の雑木もきれいに刈り払われました。

「田んぼでもなんでも機械でやるようになってから、かてーりすることがなくなって寂しいねえ」
と、ふるまいの焼酎を飲みながらつぶやくおっちゃん。
近代化とは個人化の歴史なんだなあということを実感します。

近代化の良いところを取り入れつつも、個人から”かてーり”の協働へと回帰していく。
そんな丁度いい落としどころを、これからも模索していければと思います。

Local LAB Shiiba
村内ライター:内村光希(27歳)

都城市出身。大学院を中退後、全国の農家さんを訪ねて遊びまわった末に岩手県で2年間のお百姓さん研修を受けました。そのときの研修先で知り合ったパートナーと、2018年4月より椎葉村に移住。家族構成は妻1人、ヤギ1頭。ライフワークはファシリテーションです。椎葉村をファシリテートしながら百姓として暮らすことが当面の目標です。