尾田山中の古川さんご夫妻2

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ご主人の三鶴亀(みつるき)さんは、昭和30年に椎葉村にダムができてしばらくしたころ、水道技師としてこの村にやってきたそうです。村に残ることになったのは、ここで奥さまのアヤ子さんと出会ったからだと、照れ笑い。今では、ダムを見晴らす展望台のすぐ隣にふたり仲良く暮らしています。

展望台の奥にあるお宅におじゃますると、そこには三鶴亀さんのお面工房があります。所狭しと並ぶ神楽や能のお面は、すべて三鶴亀さんの手仕事によるものだそう。きっかけは、今から25年ほど前。村にやってきた駐在所の所長さんから「私もお面づくりをするんですよ。見に来てみらんですか?」と誘われ、お面づくりを習い始めました。さらにその4年後、こんどは熊本に住む師匠に出会い、本格的に弟子入り。定年後に勤めていた商工会をやめて、熊本に通い始めたそうです。「何でも一生懸命になっちゃうのよね」と、アヤ子さんが隣で笑います。

椎葉村で古くから行われてきた神楽。お面は集落ごとに代々引き継がれ、新しく作り直すことはほとんどないといいます。三鶴亀さんのお面もふだんは贈り物のために作ることが多いそうですが、あまりの出来栄えに、最近では古くなった本物に代わって使われることもあるそうです。

「神楽のある集落は、人の絆が強い。神楽を通じてみんなで子どもを育てるからね。だから、村を出て行った子どもたちもいつかはみんなここに戻ってくるよ。」と、三鶴亀さん。いつの日か、村に戻った若者がお面づくりを学びにここを訪ねてくる光景が思い浮かびました。

Local LAB Shiiba
ライター 梶田茜